むぎ茶の資料室

いままで書いてきたものを残していきます。

スパイス

私は素人の頃から、変態プレイやSMをしてきました。物心ついたときからそういうプレイへの憧れがありましたが、成人するまではずっと我慢してきました。それがやっと叶えられるようになったとき、自分でアポを取ってプレイする場所をセッティングし、色んな講習や交流の場所に足を運ぶようになりました。それだけでは足りず、もっと数をこなして大好きなプレイの技術を身につけたかったので、これを職業にすることにしました。

今もその節はあるのですが、私という人間は非常に性的なことに執着していて、快楽主義的でいます。「もっと、もっとヒリつこう」「心が抉られるようなプレイをしよう」「死ぬほど笑って泣いて、もっと一緒にトぼう」そんなことばかりが常に頭の中にあり、他者と自分の境界線が無くなるようなプレイが理想でした。それを純粋に追い求めていた昔の私はまさにプレイジャンキーだったと思います。

突然ですが、みなさんは河川敷などで花火をしたことはありますか。スーパーで買うような花火セットです。その中には打ち上げられる大きな花火もあれば、ねずみ花火のような色物もありましたよね。わざと一本一本になっている花火を束にして一気に火をつけて無駄遣いなんかはしませんでしたか。花火を全部やり切ってしまった後ってなんだか虚しくはありませんでしたか。花火が終わった後って何も残らなくて、焦げた火薬の匂いと共に、水の張られたバケツの中に黒い花火の燃えカスが浮遊しているだけです。

私の経験上、衝動的な欲求に身を任せたプレイもそれによく似ています。やりたいことや、性的なことに関して追求したいことを一旦やり切った後、私に残ったのは虚無でした。花火セットの花火を全部消費してしまった後のような感覚です。始まる前はあんなにワクワクして仕方がなかったのに、ああ終わってしまったなって、ただただそんなどうしようもない感覚だけが残りました。

もちろん私たちがやっているM性感でのプレイも、そういう刹那的な部分があることは承知しています。もしかすると、やりたいプレイをやり切った先にあるのは、燃えカスだけかもしれない、そう思うと怖くはありませんか。

ですがそんな完全燃焼した私が、心を通わせてするプレイの本当の楽しさを知ったのもM性感でした。マゾやサブの子たちが勇気を出してたくさん自己開示をして、私のためにプレイで身を差し出してくれたことで、初めて変態プレイではなく、相手に向き合いたいと思いました。

今までは激しいことや、頭のおかしくなるようなプレイを積極的にしていたけど、そんなことをしなくても相手を知った上でするプレイなら、跪かせるだけでも大変心が満たされることが分かりました。まだ出会って日が浅い人に裸になるよう命令するのと、マゾのバックグラウンドを知った上で「脱げ」と命令するのは全然違います。こんな人がいま、私の前で情けない姿を晒しているのかって思うと加虐欲を掻き立てられます。そして言葉責めなんてしなくとも、勝手に羞恥や焦りの波が増加し、それに絡めとられてマゾたちは動けなくなるようでした。

もうここまでくると、ソフトな言葉や内容でも以前の何倍もプレイが楽しくなります。相手や自分を消費することがなく、お互いを尊重し合えた状態で居られるので、精神衛生上もすごくいいなと思います。コミュニケーションは、高級食材を使わずともプレイが美味しくなるようなスパイスみたいですね。マジックソルトかな。

自分のことは勿論ですが、私とプレイを続けてくれる子たちの人生がより豊かになっていくことを心からいつも願っています。一緒に幸せになっていこうね。